【書評】池田純著 3部作+1 ~ベイスターズ再建とその後~

ビジネス本

スポーツ業界って華やかですよね。
プロスポーツともなれば、試合の結果やオフの移籍の動向、選手の年俸などが連日ニュースで報道されます。

そんなプロスポーツの経営ってどうなっているか興味がわきませんか?
特に日本のプロ野球の球団は12しかありません。

その一つである横浜DeNAベイスターズのその経営に携わった「池田純さん」が球団再建までのプロセスを綴った本が面白く、勉強になったためまとめて紹介させていただきます。

この本はこんな方におすすめ!
  • プロスポーツビジネスを通じて経営を学びたい方
  • ベイスターズがここまで成長した理由を知りたい方
  • ベイスターズファン
どら
どら

この記事はどらが書きました。

池田純氏の紹介

池田純さんとは。
肩書としては投資家になるのでしょうか。

2011年に新設された横浜DeNAベイスターズの球団社長に就任し、2016年に任期満了で退任しています。
就任当時35歳で、当時12球団で最年少社長だったそうです。
35歳でプロ野球球団の社長ってすごいですよね!

詳細は後述しますが、赤字続きだった球団の経営を改善し黒字化し、チームの成績もクライマックスシリーズ出場まで引き上げました。
そんな輝かしい経歴を持っていまします。

それ以前の経歴としては、大学卒業後住友商事、博報堂という大手企業に就職し、その後独立。
2007年にDeNAに入社。

学生時代はかなり自由に過ごしていたそうです。
サーフィンにのめり込み海外まで行って波に乗っていたそうです。

そんな中でも将来経営することを見据えて、必要な講義は受けていたり、オーストラリアへ渡り英語を身に着けたりと、抜かりはなかったようです。
紹介する本に詳しく書かれています。(しがみつかない理由)

ちなみに、ベイスターズの社長を退任した後は、Jリーグの特任理事、ラグビー協会特任理事、B3のさいたまブロンコスのオーナー兼取締役に就任するなど、スポーツ界で活躍されています。

しかし、ベイスターズの時のようにうまくいかなかったこともあるようなので、その中身も紹介する本に書かれています(横浜ストロングスタイル)

作品の紹介

池田純氏著書の作品は4作あります。
本投稿のタイトルを3部作+1としたのには理由があります。

  • 空気のつくり方
    ベイスターズ再建をマーケティング視点で紹介
  • しがみつかない理由
    経営再建後、好調のなか社長退任の理由が語れています。
  • 常識の超え方
    ベイスターズ経営のノウハウをスポーツビジネスの教科書として紹介

池田さん本人も当初より3部作を予定したとおっしゃられています。
ここまでがベイスターズ再建のプロセスとノウハウを紹介している本です。
+1としたのは以下の作品

  • 横浜ストロングスタイル
    ベイスターズ退任後の池田さん奮闘記録

前3作とは異なり、ベイスターズ社長退任後のスポーツ界での経験が語られています。
だいぶ毛色がことなるので、+1とさせていただきました。

それでは各作品を紹介します。

空気のつくり方

3部作の1作目。ベイスターズ球団社長の時に出版された本です。


この時点(2015年)すでにベイスターズの再建に関する結果は出ていて、
赤字はほぼ解消、連日ほぼ満員の観客動員数も達成しています。

ここまでの過程を、マーケティングの視点で語られている本です。
タイトルにもある「空気」を感じる力がどのようなものかが紹介されています。

池田さんのこれまでの経験から感じるものだとは思いますが、池田さんは確実なマーケティングのプロセスを繰り返していけば「空気」は作り出せると語っています。

  • 顧客の空気
  • 世の中の空気
  • 組織の空気

このような空気を感じ取るために
顧客データの分析や、SNS活用、競合分析(ベイスターズの場合だと他チーム)や、世の中の動向分析
いわゆるマーケティングの基礎知識が必要となります。

プロ野球球団とはいえ普通の企業のマーケティングと同様なことが分かります。
それが我々に身近なプロ野球球団を事例に紹介されていますので、面白くわかりやすく学べます。

空気を作るには「センス」が必要で、後半にはその磨き方が紹介されています。
様々な経験によって蓄積されるものと、常にアンテナを高く持つこと、そして先を見据えることで「センス」磨かれるのではと感じました。

しがみつかない理由

3部作の2作目。ベイスターズの社長退任後に書かれた本です。

5年でベイスターズの再建を成功させ、チームとしてもクライマックスシリーズ進出。
まさにこれからの発展に向けて本腰を入れていく、と思いきや潔く社長退任。

「なんでやめるの?」「これかだろう」「もったいない」「優勝するまで」
という意見もあったようですが、その意見を振り切り退任に至った考え方が語られている本です。
まさに「しがみつかない理由」が語られています。

池田さんの経営者としての考え方が詰め込まれています。
そのなかで、「自分にしかできない仕事に時間を使う」といことにこだわっているようです。

池田さんの自分にしかできない仕事の一つとして、困難に挑戦することととらえているようです。
困難に挑戦し、軌道に乗ったら他の人に任せて、また挑戦する。
この考え方なので、軌道に乗ったベイスターズの経営を他の人に任せて、「自分にしかできない仕事」を求めていったのでしょう。

また、長期政権となると社内から異論がでなくなる。
そんな組織を避けたかったようです。
池田さんは敏腕すぎて、だれも文句を言えなくなってきたんでしょうね。

その他にも、池田さんの考え方、こだわり、過去の経歴なども記載されておりスポーツ業界ならずとも経営者として、ビジネスマンとして学ぶことが書かれています。

池田さんの自伝のような読み物としても楽しめます。

常識の超え方

3部作の3作目。
ベイスターズ社長での経験を、スポーツビジネスの教科書として出版された本です。

池田さん自身がベイスターズの球団社長に就任した際に、プロ野球やスポーツビジネスに関して”素人”だっため、さまざまな文献を探しあたったそうです。
しかし、体系的にまとめられた文献がなかったようで、相当苦労されたようです。

ベイスターズの成功体験を多くの人に伝えるべく、「スポーツビジネスの教科書」として本書が書かれています。
プロ野球の球団を経験することは到底ないでしょうが、経営の裏側はこうなっているんだといことがわかります。

売り上げを上げるために、シーズンシート、グッツ、スポンサー獲得、放映権、ファンクラブなどをどのように扱っていけばよいかが書かれており、興味深いです。
また、オフシーズンに必ず話題になる選手の年俸交渉も紹介されていて、これもプロ野球ファンとして面白いです。

プロ野球球団として特に特徴的と感じたのは、球団と球場の経営問題。
球団の経営と球場の経営が別々であるため、満員でホームゲームが実施されても球団は赤字となる、という実態があるようです。
ここを問題視し、今まで誰も手を付けようとしなかった横浜スタジアムの買収に挑戦しています。

今まで誰も手を付けなかったのには理由があり、かなりややこしくこじれた状況であったようです(詳しくは本書を参照ください)。
これを解決したことにより、球団としての黒字化が実現されたようです。

球団だけではなく「横浜」という地域を活性してくという考えのもと、地道に信用を積み重ねていくことで達成したのだと読み取れました。

池田さんはベイスターズの経験を今後のスポーツビジネス発展に寄与したいと考えており、今後の未来図を語っています。

本書はスポーツビジネスとしてもちろんのこと、それ以外のビジネス・経営にも役立つことが盛り込まれていますので、すべてのビジネスマンにもお勧めできます。

横浜ストロングスタイル

+1の4作目。ベイスターズ社長退任後の2年半の奮闘記。

「愚かだった」という書き出しから始まる本書。
ベイスターズでの輝かしい経験から、退任後の2年半で何も残せなかったと語っています。

いわゆる、変革者・改革者であった池田さんはそれを求めない昔かたぎの人々にはよく思われなかったということでしょう。
その方々との戦いが、ここまで語っていいのか?というくらい赤裸々に語られています。

特にラグビー界での活動については、かなりの苦労があったようです。
当時2019年のワールドカップを控えており、その後の国内リーグのプロ化も検討されいるという時期でありました。
「本気で変えたい」というオファーからラグビー協会の常任理事を努め、ワールドカップやその後のプロ化に向けて様々な提言を行って様ですが、それが実現されることはなかったようです。

この話を読んで、私は数年前のバスケットボール界を思い出しました。
幾度となくプロ化の話が上がったが、うまくいかず結果的にbjリーグとNBLのリーグ分裂。
リーグ統一に奔走するも、こちらも進まず。
変革を求めない古い考えの人、そのポジションを守りたい人が話をこじらせていたのでは、と思ってしまいます。

結果的に、バスケ界は国際資格のはく奪という外圧と、川淵さんという強力なリーダシップによりBリーグ発足に至り終息しました。
このような問題が日本のスポーツ界には根強く残っているのだと本書を読んで感じ取ることができます。

このままだと日本のスポーツ界の未来は明るくないな、と思わされます。
そんな単純なことではないと思うのですが、池田さんのような方がたくさん現れてスポーツ界を盛り上げていってくれることを期待します。

まとめ

池田純氏による横浜DeNAベイスターズ再建とその後の軌跡が語られた本を紹介させていただきました。
池田さんによって変わったベイスターズ。
変えられなかったその他のスポーツ界。

プロ野球球団の経営の裏側や、スポーツビジネスのあり方が知ることができます。
スポーツビジネスだけではなく、ほかの業界、一般の企業にも当てはまることも多く、ビジネスマン目線でも役立つことがあると思います。

池田さんは今後もスポーツ界に関わって様々な活動をされています。
今後の動向にも注目です。

ちなみに、その後B3リーグ「さいたまブロンコス」個人オーナーとなり経営再建し、またしがみつかずに退任したようです。

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